ウールの虫食い被害は多く、虫食いの対策をよく知らない人が少なくないです。
大切に使っていても、ウールの虫食い対策をしていないと着られなくなることもあります。
今回は、ウールが虫食いにあわないように、事前に知っておくべき原因と対策、万が一、虫食いにあった場合の対処法を紹介します。
ウールの虫食いが起こる前に原因を知り、普段から対策を心がけましょう。
ウールの穴は虫食い!?判断基準と原因
小さい穴だから、引っかけたかもしれないと思い、そのまま放置するとひどくなります。
まずは、ウールの穴が虫食いなのか、判断基準と原因を知っておきましょう。
- 複数個の穴は虫食いの可能性あり
- 虫食いの原因
- 害虫の種類
- 要注意は白いウール
それぞれのポイントを知っておくことで、ウールの虫食いの判断基準と原因がはっきりわかります。
複数個の穴は虫食いの可能性あり
ウールに複数個所、穴が開いていれば、虫食いの可能性大です。
デリケートな素材なので、ウールはちょっと引っかけただけで、小さな穴が開くことがあります。
しかし、一度にあちこち引っかけて、穴を開ける可能性はあまりないでしょう。
また、長期保管して久々にウールのニットやコートを出したら、1か所だけ穴が開いていたなんて場合も、虫食いの可能性が高いです。
保管中にウールの虫食いが起こることは多いので、虫食いと判断してください。
一見、引き出しやクローゼットには虫が見当たらないと思っても、虫食いの形跡があったら、虫がいたことになります。
ほかの衣類も被害にあっている可能性が高いので、確認しましょう。
虫食いの原因
ウールの虫食いの原因は、害虫の幼虫によるものです。
外出時の衣類や洗濯物に成虫が付着し、そのまま屋内に持ち込むことで被害にあいます。
ただし、成虫はウールを食べることはなく、卵から孵化した幼虫がウールを餌に成長することが直接の原因です。
人間が住む居住空間、特にクローゼットや引き出しなどは、天敵がいないため、幼虫が成長するのにはもってこいです。
また、害虫の主な食料は、動物性繊維。
羊の毛を原料にしているウールはもちろん、カシミヤ、アンゴラ、キャメルなどが、害虫の餌となります。
特に、ウール素材が好まれ、虫食いの被害にあいやすいです。
ウールを食べる幼虫は、空気の流れが悪い、湿気の多いところを好みます。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた衣類、締め切った空間が害虫にとっては快適な環境です。
そのため、長期間しまい込んだ衣類を衣替えで出すと、虫食いの被害にあっていた、なんてこともあります。
穴が開いている衣類があった場合、幼虫が隠れているかもしれません。
また、動物性繊維以外の化学繊維でも、被害にあうケースもあります。
食べこぼし、羽毛や毛皮、髪の毛、フケ、皮脂、虫の死骸などが付着していると、化学繊維でも虫食いの被害にあうので、注意が必要です。
害虫の種類
ウールなどを使った衣類の虫食いの原因となる害虫は、主に以下の虫です。
- ヒメカツオブシムシ
- ヒメマルカツオブシムシ
- イガ
- コイガ
小さい幼虫は6㎜程度、大きいものは1㎝と大きいです。
ウールにつく害虫は、成虫1匹につき、一度に数百匹も卵を産みます。
孵化した幼虫は数か月、衣類に付着し、ウールを餌に成長します。
ただし、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシは、表面を食べるため、一見穴が開いているようには見えません。
何となく、ちょっと溝ができているかな?という状態なので、気づかないこともあります。
逆にイガ、コイガは、一か所にとどまり穴を開けるので、すぐに虫食いだとわかります。
今の住宅は1年を通して暖かく、虫にも過ごしやすい気温と湿度です。
成虫になっても外に行かず、家で繁殖してしまう可能性があるので、ご注意ください。
要注意は白いウール
害虫は光に集まる傾向があるので、白い服を好むため、注意が必要です。
白いウールを外に干したり、着用して外出するだけで、害虫が付着し産卵する可能性があります。
ウールの虫食いが多い時期や環境
ウールの虫食いの多い時期や環境があるので、前もって知っておくと対策しやすいです。
- 虫が好む気温・湿度と時期
- 防虫対策は年間を通して必要
虫が好む気温・湿度と時期
虫が好む気温と温度は、20度~25度、湿度は60%以上と言われており、20度くらいになる春ごろから害虫が活発になります。
逆に熱さや寒さには弱く、25度以上、特に30度を超えると活動が鈍り、気温が低下しても同様です。
ただし、室内の場合、密閉性、気密性が高いため、年間を通して最適な温度が保たれ、虫を室内に持ち込むと1年中生息する場合もあるので、注意が必要です。
防虫対策は年間を通して必要
被害にあいやすい温度・湿度の季節だけ、対策すればいいわけではありません。
現在は、居住空間が快適な温度・湿度で守られていることが多く、害虫にとっても最適な環境です。
特に密閉性の高いマンションは、室温が下がらないので、注意が必要です。
年間を通して、防虫対策を行いましょう。
ウールを虫食いから守る虫よけ方法15
大切なウール素材の衣類を虫食いから守る、虫よけの方法がいくつかあります。
普段から以下のポイントを抑えて、ウールのケアすることが重要です。
- 衣類を叩いて汚れを落としてからしまう
- アイロンで熱処理する
- 掃除機で吸い取る
- 一度そでを通したものは洗う
- しっかり乾燥させてからしまう
- クローゼットや引き出しなどを清潔にする
- 定期的に虫干しする
- 空間に余裕を持ってしまう
- 防虫剤の置き方・種類・期限に注意
- コートは防虫カバーで守る
- 除湿剤を使用する
- 収納場所を変える
- クローゼット・引き出しを開け風を通す
- クリーニング後はビニールから出す
- 衣替えの時期はGWまで
普段から虫よけ対策をしておけば、ウールの虫食いのリスクが下がります。
それでは、順番に見ていきましょう!
1.衣類を叩いて汚れを落としてからしまう
ウールの虫食い被害にあわないためには、衣類を叩いて汚れを落としてからしまう癖をつけてください。
外出先から戻ったときは、害虫が付着して、そのまま持ち込む可能性があります。
害虫を持ち込まないためにも外出先から戻ったら、玄関先で汚れを叩き落とすのがおすすめです。
鞄などにも意外と虫がつきやすいので、鞄やアウターを叩いてから家に入りましょう。
身に着けているものを叩いて汚れを落とすだけで、ウールの虫よけには効果的です。
洗濯物を取り込む際も、叩いてから家に入れてください。
干した衣類に害虫が、付着している可能性があります。
また、ウールの汚れを落とすためにブラシを使用する場合は、黒豚毛のブラシを使うのがおすすめです。
ブラッシングは、ウールの汚れや虫を落とすだけでなく、キメを整える、静電気が起きにくくなる効果も期待できます。
2.アイロンで熱処理する
害虫は熱に弱いため、アイロンをかけるだけで駆除できます。
クローゼットにしまう前、帰ってきてから、さっとアイロンがけしておくと虫を死滅させられます。
ただし、ウールやカシミアなど、動物性繊維の衣類は、デリケート素材なので、洗濯表示を確認する、あて布をしてからアイロンをかけるようにしましょう。
3.掃除機で吸い取る
長期間保管していたウールのセーターやコートを出したときは、幼虫やさなぎの抜け殻がついていることもあります。
取り出した際は、掃除機で衣類の表面を吸い取ってください。
また、風通しの良いところで干す、洗濯してから着るようにしましょう。
4.一度そでを通したものは洗う
一度そでを通したものを洗うことで、虫食いのリスクが軽減できます。
気づかない間に食べこぼした場合、特にウールは虫食い被害がひどくなるので、注意が必要です。
そでを通したものは、洗濯するように心がけましょう。
洗剤の中でも、特におすすめなのは粉末洗剤。
粉末洗剤は、弱アルカリ性なので、皮脂汚れ、タンパク質汚れに効果的です。
また、時短で洗濯すると汚れが落ちない場合もあるので、しっかり洗ってください。
食べこぼしや汗ジミなどがある場合は、原液やシミ専用の部分洗い剤を塗布してから洗濯機で洗います。
臭いが気になる場合は、40℃くらいのぬるま湯に酵素入り粉末洗剤を溶かし、30分~2時間程度、衣類をつけおきしてから洗濯します。
また、自宅で洗えない衣類は、クリーニングに出しましょう。
どうしてもクリーニングに出せない場合は、汚れを落とす、乾燥させる、アイロンで熱処理する、掃除機で吸い取るなど、前述の方法を実践してください。
5.しっかり乾燥させてからしまう
洗濯した衣類は、しっかり乾燥させてからしまわないと虫食いの原因になります。
十分乾かさないと衣類の傷みの原因にもなるので、注意しましょう。
また、雨の日は特に気を付けてください。
衣類が濡れた状態でクローゼットにしまうと、中の湿度が上がり、湿気をしまい込むので、避けてください。
浴室乾燥機や乾燥機がある場合は、しまう前にしっかり乾かしておくのもいいでしょう。
なければ、扇風機にあてる、クローゼットの外に干しておくのがおすすめです。
6.クローゼットや引き出しなどを清潔にする
虫食いの被害を出さないためには、虫が住みづらい環境を整えることです。
定期的にクローゼットや引き出しなどを掃除するようにしてください。
衣類害虫は、どこにでもいる可能性があるので、定期的に清掃することを心がけましょう。
7.定期的に虫干しする
ウールなどは定期的に虫干しして風を通し、虫の好む環境を作らないようにしてください。
風を通すことで湿気が解消され、虫が寄り付かなくなります。
虫干しは、晴れた日、風通しの良い日陰で、ハンガーにかけて干します。
直射日光は素材の劣化にもつながるので、日陰がなければ、風通しの良い家の中で干してもかまいません。
8.空間に余裕を持ってしまう
収納空間に余裕を持ってしまうのも、ウールの虫食い被害のリスクを軽減させます。
コートやセーターなどをぎゅうぎゅうに詰め込むと、湿度や温度が上がりやすくなる上、埃や繊維がたまりやすくなります。
たくさん入るからといって詰め込むと、ウールの虫食い被害にあいます。
少し隙間が開く8分程度にして、衣類同士に空間ができるようにしましょう。
また、積み重ねて引き出しにしまうのではなく、縦型にしまうと空気の流れができます。
コートに関しては、畳むと害虫が住みやすくなるので、必ずハンガーにかけて保管してください。
9.防虫剤の置き方・種類・期限に注意
ウールの虫食いを防ぐためには、防虫剤を使うのもおすすめです。
ただし、虫よけ効果を高めるために、防虫剤の置き方、種類、期限にも注意が必要です。
引き出しに入れるタイプは、ウールの上に等間隔で防虫剤を置きましょう。
防虫剤の成分は重みがあるため、下に流れるようになっています。
また、防虫剤の用途によって、タンス用・衣装ケース用・クローゼット用・ウォークインクローゼット用とわかれているので、場所に合わせて使い分けてください。
防虫剤を使う際は、密閉空間で使用します。
クローゼットを常に開けておくと、成分が上手くいきわたらないので、防虫剤を使う場合は、扉や引き出しを閉めて使ってください。
また、防虫剤は、大きく分けて4種類あります。
ナフタリン・ピレスロイド・パラジクロルベンゼン・しょうのう、の4種類です。
ピレスロイド系は、他の防虫剤と併用ができますが、その他の防虫剤は併用するとガスが発生したり、変色やシミの原因になります。
必ず同種の防虫剤を使ってください。
種類 | ナフタリン | ピレスロイド | パラジクロルベンゼン | しょうのう |
---|---|---|---|---|
主な商品 | ネオパース他 | ムシューダ他 | ネオパラエース他 | きものしょうのう他 |
特徴 | 効くまでに時間がかかるが、長持ち。 あまり使わない衣類や毛皮、皮革製品、和服、人形に最適。 塩化ビニールへは使用不可。 |
無臭で安全性が高い。 効果が長い。 種類が多い。 臭いがつかず、普段使いの衣類に最適。 |
効果が早い。 短期間で消費。 個数が多く必要。 害虫が好むウールや絹製品向け。 4か月~半年の効果だが、3か月ごとに確認するのがおすすめ。 |
自然な香り。 効果の期間はその他の防虫剤の中間。 自然な香りのため、和服、絹製品、毛皮に最適。 |
有効期限 | 半年~1年 | 半年~1年 | 4か月~半年 | 半年 |
使用個数 | 50リットルに対し2シート | 50リットルに対し2個 | 50リットルに対し10個 | 50リットルに対し2個 |
ほかの防虫剤との併用の可否 | × | 〇 | × | × |
※詳しくは各商品の用量、用法、使用期間をご確認ください。
10.コートは防虫カバーで守る
コート類は、防虫カバーを被せておくと、虫を寄せ付けないのでおすすめです。
防虫カバーを使うことで、埃がつかない、臭いがつかない、カビの抑制ができる、通気性がいいなど、防虫効果以外にもメリットがあります。
また、防虫カバーには、コート・ワンピース用、ジャケット用など、種類があるので、確認してから購入してください。
※防虫カバーにも使用期限があります。効果は1年間程度になるので、定期的に交換するようにしてください。
11.除湿剤を使用する
クローゼットや引き出しは湿気が多い場合があるので、除湿剤を使用するのもおすすめです。
また、気になる場合は、除湿剤にプラスして、防カビ効果のある防虫剤を使ってもいいでしょう。
12.収納場所を変える
虫がつきやすいウールの衣類は、分けて収納するとほかの衣類の被害を防ぐことができます。
ただし、収納場所が狭い場合は、密閉性の高い収納ケース、圧縮袋などを使って保管するしかありません。
13.クローゼット・引き出しを開け風を通す
衣替えまでクローゼットや引き出しを密閉させたままだと、虫の好む環境を整えてしまいます。
定期的にクローゼットや引き出しを開けて、風通しを良くしてください。
晴れていて乾燥した日に、扉や引き出しを開けておきましょう。
また、扇風機をかけると湿気が飛びやすくなります。
逆に雨の日に扉や引き出しを開けておくと逆効果なので、雨の日など湿度の高い日は、閉めたままにしてください。
14.クリーニング後はビニールから出す
クリーニング後は、ビニールカバーからすぐに出しましょう。
大切なウール素材の衣類は、クリーニングのビニールを取ったら、すぐに圧縮袋に入れてしまうのもおすすめです。
密閉性があり、虫よけ効果が高いです。
15.衣替えの時期はGWまで
ウールなどにつく害虫は、GW頃に成虫になります。
夏に産卵、秋に幼虫、冬を越してから春にサナギになり、GW頃に成虫になります。
そのため、衣替えの時期は、GW前までにすると良いと言われています。
GWまでには、洗濯、クリーニング、掃除機で吸い取るなど、汚れをよく落としてから衣替えをしましょう。
また、衣替えをする際のポイントは以下の通りです。
- よく晴れた日に衣替えする
- 乾かす
- 日光と風に当て虫干ししてからしまう
- アイロンをかけて駆除してからしまう
- 掃除機をかけてしまう
- 洗濯してからしまう
- 汗、食べかす、シミなどのたんぱく質は虫食いの原因になるため、落としておく
- 詰め込みすぎず、余裕のある空間にしまう
上記の点を守って、衣替えを行ってください。
ウールに虫食いを見つけたら補修を
ウールが虫食いされてしまったら、補修することもできます。
虫食いされたからと、あきらめる必要はありません。
ウール虫食いの補修方法は、2つあります。
- クリーニング店やリフォーム専門店で補修してもらう
- 自分で補修する
クリーニング店やリフォーム専門店で補修してもらう
クリーニング店やリフォーム専門店で、ウールの虫食いを補修してくれます。
「かけつぎ(かけはぎ)」で、虫食いされた穴を補修できる可能性があります。
かけつぎ(かけはぎ)は、周囲の繊維を取り込みながら、補修して衣類を再生する技術です。
また、接着補修、細い糸でかがり補修、縫込み補修、その他、特殊な方法で、補修が可能です。
ウールの補修をする専門店は多いので、諦めずにまずは相談してください。
大切なウールの虫食いを見つけたら、早めにかけつぎ(かけはぎ)のお店に持ち込みましょう。
補修の料金は、5000円前後かかります。
自分で補修する
あまりおすすめしませんが、ウールの虫食いなどを自分で補修する方法もあります。
小さなもの、あまりお金をかけたくない場合は、自分でウールの虫食いを補修してもいいでしょう。
完全に穴が開いていない、ちょっとへこんでいる場合は、目打ち・安全ピン・針などで周囲の繊維を毛羽立たせることで目立ちにくくなるので、まずは試してください。
小さな穴が開いている場合は、購入時についてきた同じ色の糸または近い色の糸を用意します。
- 後ろから針を通して、編み目に合わせ縫い合わせていきます。
- 完全にふさがるまで繰り返し、玉止めしてください。
編み目に合わせることで、目立たなくなります。
また、購入時についてきた補修布があれば、接着ジェルを使って布を裏側からアイロン接着する方法もあります。
ただし、穴が本当に小さい場合は、補修布を使う必要はありません。
そのほか、羊毛フェルトの原毛を使って、ウールの穴を補修する方法もあります。
- 同じ色合いの羊毛フェルトの原毛を用意します。
- 穴より大きめに原毛をちぎって、丸めてから穴に当ててください。
- 下にスポンジを当て、フェルト針で周りの繊維と合わせるように刺してくっつけていきます。
- 徐々に中心部に向かって刺してください。
- 裏返したら、裏側も同じように刺します。
- 石鹸水でなじませ、同じ工程を繰り返します。
まとめ
ウールの虫食いは、外から持ち込んだ害虫の幼虫が原因です。
前もってウールの保管方法や普段のケアに気を付けることで、ウールの虫食いはぐっと減ります。
また、万が一、ウールの虫食いを見つけた場合も早めにわかれば、自宅で簡単に穴をふさぐことができます。
穴が大きい場合も、大切な衣類であれば、お金をかけて補修ができるので、まずは修理対応できるクリーニング店や専門店に持ち込みましょう。